坂本龍一

便利すぎる社会は選択肢を奪うのかもしれませんね。最近若くて優秀なミュージシャンと演奏する機会があったんですが、彼はいつもパソコンで音楽を作っていたので、生まれて初めて、ほかの人間と音を出したというのです。びっくりしました。自分の頭のなかにある音楽を表現してきて、ほかの人間とやる必要性を感じないらしい。僕のほうから声をかけて共演したんだけれど、僕の音を聴いていない。二人ならではの音楽をやろうとしていないんです。僕がいてもいなくても同じ。そういうミュージシャンが多くなっているのでは、と嘆いています。